千葉県は成田国際空港、東京ディズニーリゾート、幕張新都心というユニークな産業を擁する県です。これらの産業は千葉県の雇用と賃金にどのような影響を与えているのでしょうか。賃金構造基本統計調査のデータで千葉の年齢別賃金を確認してみましょう。
千葉県の年齢別所定内給与額(男女計・2023年)
| 年齢階級 | 所定内給与額(月額) |
|---|---|
| 20〜24歳 | 250,900円 |
| 25〜29歳 | 288,600円 |
| 30〜34歳 | 317,400円 |
| 35〜39歳 | 331,300円 |
| 40〜44歳 | 357,000円 |
| 45〜49歳 | 372,700円 |
| 50〜54歳 | 387,900円 |
| 55〜59歳 | 384,800円 |
| 60〜64歳 | 320,000円 |
| 年齢計 | 337,800円 |
千葉県の年齢計337,800円は、関東7都県の中で6位(群馬県の326,600円に次いで低い位置)です。しかし、この数字の背景にある産業構造を理解すると、単純に「賃金が低い県」とは言い切れません。
千葉の賃金を形成する3つの産業軸
① 成田空港関連産業
成田国際空港は年間3,000万人以上(コロナ前)の旅客を受け入れる日本最大の国際空港です。航空・地上支援(グランドハンドリング)・通関・物流・ホテルなど多様な雇用を生んでいます。航空貨物・通関業は専門性が高く、比較的安定した賃金を支えています。
② 物流・倉庫業
東京湾岸エリア(船橋・市川・習志野)には大手ECの物流センターが集積しています。一方でこうした施設の現場労働はパート・派遣比率が高く、平均賃金を押し下げる方向に働いています。
③ サービス・観光業
東京ディズニーリゾート(浦安市)は約7万人(直接・間接含む)を雇用していると言われますが、パーク内の多くはアルバイト・非正規雇用です。この大規模なパート雇用が千葉の平均賃金を押し下げる要因のひとつです。
年齢カーブの特徴:55〜59歳がピークに届かない
注目すべきは55〜59歳の384,800円が50〜54歳(387,900円)よりわずかに低い点です。これは、定年が近づく55歳以降に高賃金管理職が管理職定年や出向・役職定年で賃金が下がる層が多く、千葉在住・勤務の高齢層に影響を与えているためと考えられます。
男女別の状況
| 年齢階級 | 男性 | 女性 | 女性÷男性 |
|---|---|---|---|
| 年齢計 | 375,300円 | 275,600円 | 73.4% |
| 20〜24歳 | 263,000円 | 241,800円 | 91.9% |
| 25〜29歳 | 304,100円 | 270,100円 | 88.8% |
| 40〜44歳 | 394,800円 | 282,800円 | 71.6% |
| 50〜54歳 | 445,400円 | 285,700円 | 64.1% |
50〜54歳の男性445,400円に対し女性285,700円(女性は男性の64.1%)という格差は、千葉県の製造・物流業での男女役割分担が強い職場構成を反映しています。
幕張新都心の存在
幕張新都心(千葉市美浜区)は1990年代に計画的に整備された副都心で、富士通・日本IBM・三菱UFJフィナンシャル・グループなど大手企業のオフィスが集積しています。最近はサイバーエージェントの千葉事務所など新興IT企業も入居しています。この幕張ゾーンが千葉市の賃金水準を下支えしています。
まとめ
- 千葉県の年齢計賃金は337,800円。関東の中では下位だが、独自の産業構造(空港・物流・観光)を反映
- 成田空港の専門職系は賃金水準を支えるが、TDRのパート雇用・物流センターの非正規が平均を押し下げる
- 55〜59歳がわずかに50〜54歳より低く、高齢管理職の役職定年の影響が見える
- 幕張新都心の大企業集積が千葉市の賃金底上げに寄与
出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(政府統計の総合窓口 e-Stat)