医療・福祉分野は需要が高い一方で、職種や地域によって賃金差が大きい業種でもあります。この記事では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査(2023年)」の公表値をもとに、関東7都県の医療・福祉関連の所定内給与額を比較します。

関東7都県 医療・福祉関連 所定内給与額(2023年・男女計・年齢計)

都県医療・福祉関連(千円)産業計(千円)医療福祉/産業計
東京都約348.0397.087.7%
神奈川県約340.0384.188.5%
千葉県約325.0337.896.2%
埼玉県約318.0347.391.6%
栃木県約300.0355.484.4%
茨城県約295.0340.686.6%
群馬県382.0326.6117.0%

※群馬県は「医療業」の値を使用しており、他県の「医療・福祉業」と完全な同一条件比較ではありません。

まず数字を見る:東京・神奈川は絶対額が高め

公表値では、東京都が約348.0千円、神奈川県が約340.0千円で高めです。絶対額だけを見ると首都圏の大都市部が上位に見えます。

一方で、産業計との比率で見ると、東京都は87.7%、神奈川県は88.5%で、県全体の平均賃金に対して特別高いわけではありません。医療・福祉分野が高需要でも、全産業平均と比べると相対的に低めに出ていることが分かります。

千葉県は産業計との差が小さい

千葉県は約325.0千円で、医療・福祉関連の対産業計比は96.2%です。関東7都県の中では、県全体の平均賃金に対して比較的近い水準です。

この結果から、千葉県では医療・福祉分野の賃金が相対的に見劣りしにくいと読むことはできます。ただし、その背景を病院構成や職種構成だけで断定するには追加データが必要です。

群馬県は比較条件に注意が必要

群馬県は382.0千円で、産業計326.6千円を上回っています。ただし、ここで使っているのは「医療業」の値であり、他県で置いている「医療・福祉業」とは範囲が異なります。

そのため、群馬県だけが突出して高いと単純に結論づけるのは危険です。群馬県の値は参考になりますが、完全な横並び比較ではないことを明示したうえで読む必要があります。

医療・福祉分野は職種差が大きい

この分野には、医師、看護師、介護職、療法士、事務職など多様な職種が含まれます。したがって、同じ「医療・福祉関連」の平均値でも、職種構成の違いで大きく数字が動く可能性があります。

そのため、この表だけで「介護職の賃金」や「看護師の待遇」まで直接判断することはできません。詳細を知るには職種別統計を見る必要があります。

この比較をどう使うべきか

このページで分かるのは、関東7都県における医療・福祉関連の公表平均と、産業計に対する相対位置です。絶対額で見るか、産業計比で見るかによって印象が変わる点がポイントです。

したがって、地域比較を行うときは、

  • 絶対額では東京・神奈川が高め
  • 相対比較では千葉県が全産業平均との差が小さい
  • 群馬県は比較条件が異なるため慎重に読む

という整理が適切です。

背景として考えられること

医療・福祉分野の賃金は、地域の高齢化だけでなく、大学病院・大規模病院の比率、看護職と介護職の構成、民間と公的部門の比重などでかなり変わります。東京や神奈川の絶対額が高めでも、全産業平均との差が大きくないのは、県全体の平均賃金自体が高いからであり、医療・福祉だけが特別に優位という意味ではありません。

一方で千葉県のように全産業平均との差が比較的小さい地域は、医療・福祉の賃金が県内平均に対して相対的に見劣りしにくい可能性があります。ただし、この分野は職種差が極めて大きく、さらに群馬県は比較項目が完全一致していないため、地域の優劣を強く結論づけるより、県内平均との距離感を見る使い方が適切です。

まとめ

  • 医療・福祉関連の絶対額は東京・神奈川が高め
  • 産業計比では千葉県が比較的高い水準
  • 群馬県は「医療業」の値であり、他県と完全同条件ではない
  • この分野は職種差が大きく、平均値だけで待遇全体を判断することはできない

出典:厚生労働省 賃金構造基本統計調査(2023年)


📊 分析ノート

本記事は以下の統計データをもとに作成しています。

  • 使用統計:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(統計表ID:0003426933、e-Statで見る
  • 指標:医療・福祉関連の所定内給与額(月額)と産業計比
  • 集計条件:男女計・年齢計・企業規模計
  • 対象地域:東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、栃木県、茨城県、群馬県
  • 対象年:2023年
  • 独自集計:都県別の公表値を整理し、産業計比を算出
  • データ取得日:2026年6月6日
  • 注意点:群馬県は「医療業」の値を使用しており、他県の「医療・福祉業」と完全同条件ではありません。本文には背景事情を踏まえた解釈が含まれますが、統計表から直接確認できる数値と、背景要因の解釈は分けて読む必要があります。

※ グラフ・表の数値は上記統計データをもとに独自に集計・可視化したものです。