「埼玉は東京のベッドタウン」という言葉をよく耳にします。実際に埼玉県民の多くが東京の企業で働いており、その賃金統計には興味深い特徴が表れています。厚生労働省の賃金構造基本統計調査をもとに、埼玉県の年齢別賃金の実態を見ていきます。
埼玉県の年齢別所定内給与額(男女計・2023年)
| 年齢階級 | 所定内給与額(月額) |
|---|---|
| 20〜24歳 | 255,900円 |
| 25〜29歳 | 288,400円 |
| 30〜34歳 | 321,500円 |
| 35〜39歳 | 339,200円 |
| 40〜44歳 | 370,700円 |
| 45〜49歳 | 377,400円 |
| 50〜54歳 | 392,000円 |
| 55〜59歳 | 389,300円 |
| 60〜64歳 | 342,000円 |
| 年齢計 | 347,300円 |
年齢計347,300円は、東京都(397,000円)より約5万円、神奈川県(384,100円)より約3.7万円低い水準です。しかし、埼玉の賃金統計には「東京勤務者が計上されない」という構造的な注意点があります。
「東京勤務者」は埼玉の統計に入らない
賃金統計は就業地(働いている場所)ではなく、勤務先が所在する都道府県で集計されます。大宮・浦和・川越などに住みながら東京の企業に通勤している人は、東京都の統計に計上されます。
これは埼玉県の賃金統計を押し下げる要因です。東京勤務の高賃金層が「東京都の統計」として吸い上げられ、埼玉に残る就業者は相対的に中小・地元企業勤務の比率が高くなります。
30代以降の上昇が緩やか
埼玉の賃金カーブの特徴は、30代中盤から40代にかけての上昇が東京・神奈川より緩いことです。
- 25〜29歳 → 30〜34歳:+33,100円
- 30〜34歳 → 35〜39歳:+17,700円(上昇鈍化)
- 35〜39歳 → 40〜44歳:+31,500円
この緩やかな上昇は、管理職への昇進が起きやすいのが東京本社(東京都の統計)であり、埼玉の事業所では現場職・専門職の比率が高いことを示しています。
男女別の状況
| 年齢階級 | 男性 | 女性 | 女性÷男性 |
|---|---|---|---|
| 年齢計 | 380,700円 | 283,300円 | 74.4% |
| 20〜24歳 | 267,800円 | 242,200円 | 90.4% |
| 25〜29歳 | 300,800円 | 271,700円 | 90.3% |
| 40〜44歳 | 404,900円 | 294,600円 | 72.8% |
| 50〜54歳 | 437,800円 | 300,900円 | 68.7% |
興味深いのは、20〜24歳・25〜29歳の女性賃金が東京・神奈川と比べて差が小さいことです。若い年代での男女格差(女性÷男性が90%超)は関東全体で共通しており、埼玉も例外ではありません。
さいたま市の存在感
埼玉県で賃金を語るとき、忘れてはならないのがさいたま市の存在です。旧大宮市・浦和市・与野市が合併して誕生したさいたま市は、NTT東日本・NEXCO東日本・ソニー生命など大手企業の関東支社・子会社の集積地であり、埼玉県全体の賃金水準を底上げしています。
また、大宮駅周辺には金融・保険業や専門サービス業が集まっており、「東京に次ぐ北関東の経済拠点」としての機能を持ち始めています。
まとめ
- 埼玉県の年齢計賃金は347,300円。東京・神奈川より低いが首都圏ベッドタウンとして一定の水準を維持
- 東京勤務者が「東京都の統計」に計上されるため、埼玉県の数字は構造的に押し下げられている
- 30代以降の賃金上昇が東京・神奈川より緩やかで、管理職昇進が首都の事業所に集中している実態が見える
- 男女格差は全年代で存在するが、若年層では90%超と小さい
出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(政府統計の総合窓口 e-Stat)