「若いうちは都県差が小さいが、年を取るにつれて差が開く」——賃金データを見ると、このパターンがはっきり表れます。20代では月2〜3万円程度だった都県間の差が、40〜50代では月10万円以上に膨らむのはなぜでしょうか。賃金構造基本統計調査で関東7都県の中高年賃金を比較します。
40〜59歳の都県別賃金比較(2023年・男女計)
| 都県 | 40〜44歳 | 45〜49歳 | 50〜54歳 | 55〜59歳 |
|---|---|---|---|---|
| 東京都 | 425,700円 | 452,900円 | 465,400円 | 490,400円 |
| 神奈川県 | 417,700円 | 425,500円 | 440,700円 | 455,100円 |
| 栃木県 | 385,900円 | 388,600円 | 419,100円 | 431,700円 |
| 埼玉県 | 370,700円 | 377,400円 | 392,000円 | 389,300円 |
| 茨城県 | 367,900円 | 366,400円 | 385,000円 | 380,200円 |
| 千葉県 | 357,000円 | 372,700円 | 387,900円 | 384,800円 |
| 群馬県 | 352,600円 | 360,700円 | 366,700円 | 378,000円 |
東京と群馬の差は55〜59歳で月11.2万円
20〜24歳での東京・群馬差は26,300円でしたが、55〜59歳になると112,400円差(490,400円 - 378,000円)まで拡大します。年収換算では約135万円の差になります。
この差が生まれる主な理由は:
① 管理職昇進の差:東京の大企業では部長・本部長クラスへの昇進が40〜50代に集中し、これが賃金を大きく押し上げます。地方の事業所では管理職ポストが少なく、同じ年齢でも昇進できる確率が低い。
② 大企業・外資比率の差:東京は外資系企業・大手金融・IT企業が集中し、50代の管理職は年俸1,000万円超も珍しくありません。これが統計の平均を押し上げます。
③ 出向・転籍の影響:大企業から関連会社・子会社に出向・転籍する50代が多いですが、出向先が都外の場合はその都県の統計に計上されます。
栃木が埼玉・茨城・千葉を逆転する50代
注目すべきは、栃木が50代以降で埼玉・千葉・茨城を大きく上回る点です。
- 50〜54歳:栃木419,100円 > 埼玉392,000円(差27,100円)
- 55〜59歳:栃木431,700円 > 千葉384,800円(差46,900円)
これはホンダ・日産・キヤノンの技術管理職(部長・技術部長クラス)が50代に高い賃金を受け取る構造に起因します。首都圏のベッドタウン県(埼玉・千葉)では東京勤務の高賃金層が「東京の統計」に吸い上げられる一方、栃木は地元大企業の管理職が栃木の統計に留まるため、50代の実態が高くなります。
埼玉・千葉が55〜59歳で下がる謎
埼玉(389,300円)と千葉(384,800円)は50〜54歳から55〜59歳でむしろ下がっています。これは、55歳以降に:
- 役職定年(多くの企業で55〜58歳に設定)で管理職から外れ、賃金が下がる層が増える
- 東京の大企業を定年退職・早期退職して地元(埼玉・千葉)の中小企業に転籍する層が増える
- 高賃金の東京勤務者が55〜59歳で退職・自営業に移行する
といった理由が考えられます。
「キャリアのピーク」は都県によって違う
| 都県 | 賃金ピークの年代 |
|---|---|
| 東京都 | 55〜59歳(490,400円) |
| 神奈川県 | 55〜59歳(455,100円) |
| 栃木県 | 55〜59歳(431,700円) |
| 埼玉県 | 50〜54歳(392,000円) |
| 千葉県 | 50〜54歳(387,900円) |
| 茨城県 | 50〜54歳(385,000円) |
| 群馬県 | 55〜59歳(378,000円) |
東京・神奈川・栃木・群馬は55〜59歳がピークで、「役職・シニア専門職として活躍できる期間が長い」ことを示しています。
まとめ
- 20代の都県間差:月2〜3万円 → 55〜59歳では月11万円以上に拡大
- 東京の55〜59歳490,400円は突出した水準(大企業管理職・IT・金融の恩恵)
- 栃木の50代は北関東で圧倒的首位(ホンダ・日産・キヤノン製造業管理職の影響)
- 埼玉・千葉は55〜59歳でわずかに下がる(役職定年・東京勤務者の退職の影響)
出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(政府統計の総合窓口 e-Stat)