コロナ禍を経た2020〜2023年の間、日本全体で物価上昇・最低賃金引き上げが進みました。関東7都県の賃金は実際にどう変化したのでしょうか。利用可能な賃金データ(2020年・2023年)を比較して、3年間の変化を分析します。

2020年→2023年 賃金変化一覧(年齢計・男女計)

都県2020年2023年増加額増加率
東京都396,300円397,000円+700円+0.2%
神奈川県364,400円384,100円+19,700円+5.4%
埼玉県324,700円347,300円+22,600円+7.0%
千葉県328,700円337,800円+9,100円+2.8%
茨城県325,800円340,600円+14,800円+4.5%
栃木県314,900円355,400円+40,500円+12.9%
群馬県310,300円326,600円+16,300円+5.3%

最大の驚き:栃木県+12.9%

関東7都県の中で最も賃金が伸びたのは栃木県の+12.9%(+40,500円)です。これはホンダ・日産・キヤノンといった大企業が近年大幅な賃上げを実施したことが直接的な要因です。

特に製造業では2022〜2023年にかけて「賃上げラッシュ」が起きました。ホンダは2023年に5%超の賃上げを実施、キヤノンも物価上昇に対応した賃上げを行っており、これらが栃木県の統計に反映されています。

東京都がほぼ横ばいの理由

対照的に東京都は3年間で+700円(+0.2%)とほぼ変わっていません。これは矛盾しているように見えますが、以下の理由が考えられます:

① 既に高水準のため物価上昇による押し上げ効果が小さい:東京の大企業はコロナ禍でも賃金を維持しており、2020年の396,300円はすでに高い水準でした。

② 産業構成の変化:コロナで特に打撃を受けた飲食・ホテル・観光業(東京に集中)の回復が遅く、この分野での賃金低下が平均を押し下げている可能性があります。

③ リモートワークによる高賃金層の転出:コロナ以降、東京の高賃金IT・金融ワーカーが神奈川・埼玉に転居した可能性があり、東京の統計から抜け、神奈川・埼玉の上昇につながっているかもしれません。

都県間の賃金格差は縮小しているか

2020年の格差(東京396,300円 vs 群馬310,300円 = 差86,000円)→ 2023年(397,000円 vs 326,600円 = 差70,400円)と、格差は15,600円縮小しています。

しかし、縮小の主因は「東京が上がらなかった」ことであり、「地方が追いついた」とは言い切れません。栃木が大きく伸びた一方で東京が横ばいだったという特殊な3年間だった可能性があります。

埼玉の+7.0%も注目に値する

埼玉県の+22,600円(+7.0%)も見逃せません。2020年以降、大宮・川口・浦和など埼玉の交通要衝では物流・IT系企業の進出が続いており、比較的賃金の高い職種が増えていることが反映されています。また最低賃金の上昇(2020年980円→2023年1,028円/埼玉)が非正規労働者の賃金を底上げした影響もあります。

物価上昇を考慮すると実質賃金はマイナスの可能性

名目賃金の変化率を確認しましたが、2020〜2023年の消費者物価指数は約5〜6%上昇しています。これを踏まえると:

  • 栃木(+12.9%):物価上昇を超えた実質賃金増の可能性あり
  • 埼玉(+7.0%):物価上昇とほぼ同等か、わずかな実質増
  • 千葉(+2.8%):物価上昇に追いつかず実質賃金低下の可能性あり
  • 東京(+0.2%):大幅な実質賃金低下の可能性あり

まとめ

  • 2020〜2023年で最も伸びたのは栃木県(+40,500円・+12.9%)
  • 東京都はほぼ横ばい(+700円・+0.2%)
  • 都県間格差は86,000円→70,400円と15,600円縮小したが、「東京が上がらなかった」のが主因
  • 物価上昇(約5〜6%)を考えると、増加率5%未満の都県では実質賃金は低下している可能性
  • 今後は大企業賃上げが地方製造業にどこまで波及するかが格差縮小の鍵

出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2020年・2023年(政府統計の総合窓口 e-Stat)