関東7都県の賃金ランキングで「栃木県が3位」と聞いて意外に思う方は多いでしょう。「日光・那須の観光地」というイメージが先行しますが、栃木は実は製造品出荷額が関東2位の製造業王国です。賃金構造基本統計調査で、その実態を確認します。
栃木県の年齢別所定内給与額(男女計・2023年)
| 年齢階級 | 所定内給与額(月額) |
|---|---|
| 20〜24歳 | 241,300円 |
| 25〜29歳 | 282,800円 |
| 30〜34歳 | 329,300円 |
| 35〜39歳 | 353,600円 |
| 40〜44歳 | 385,900円 |
| 45〜49歳 | 388,600円 |
| 50〜54歳 | 419,100円 |
| 55〜59歳 | 431,700円 |
| 60〜64歳 | 311,000円 |
| 年齢計 | 355,400円 |
東京(397,000円)・神奈川(384,100円)に次ぐ関東3位、北関東3県では断トツのトップです。
栃木を支える「製造業の巨人たち」
栃木の高い賃金水準を支えているのは、大手製造企業の集積です。
ホンダ栃木製作所(芳賀町):SUVやスポーツカーを生産するホンダの主要拠点。技術職・技能職ともに高い賃金体系を持ちます。
日産自動車栃木工場(上三川町):GT-Rなどの高級・スポーツモデルを生産する特別な工場。熟練工が多く、賃金水準も高いとされています。
キヤノン宇都宮事業所・大田原事業所:カメラ・光学機器・医療機器を製造するキヤノンの主力工場。研究開発部門も置かれ、エンジニアの比率が高いです。
これらの大企業が40〜50代の管理職・熟練技術者層に高い賃金を支払っていることが、栃木の50代賃金(419,100円〜431,700円)の高さに表れています。
50代の伸びが突出している
栃木の賃金カーブの最大の特徴は50〜54歳(419,100円)・55〜59歳(431,700円)の高さです。
北関東3県(茨城・群馬)と比べると:
- 50〜54歳:栃木419,100円 vs 茨城385,000円(+34,100円差)vs 群馬366,700円(+52,400円差)
- 55〜59歳:栃木431,700円 vs 茨城380,200円(+51,500円差)vs 群馬378,000円(+53,700円差)
50代後半での差が非常に大きく、大企業の技術管理職・部長クラスが多い栃木特有の構造です。
男女別の状況
| 年齢階級 | 男性 | 女性 | 女性÷男性 |
|---|---|---|---|
| 年齢計 | 395,500円 | 270,700円 | 68.4% |
| 20〜24歳 | 250,700円 | 230,600円 | 92.0% |
| 50〜54歳 | 471,300円 | 296,400円 | 62.9% |
| 55〜59歳 | 483,700円 | 294,800円 | 61.0% |
女性÷男性が68.4%と関東7都県で最も格差が大きい水準です。製造業(特に自動車)では管理職・技術職の大部分を男性が占める傾向があり、その構造が数字に表れています。
宇都宮と「地方中枢都市」化
県庁所在地・宇都宮市は人口52万人(2023年)の北関東最大の都市で、2023年8月にLRT(次世代路面電車)が開業しました。IT企業・医療・サービス業のオフィスも増え、製造業一辺倒ではない雇用構造への変化が始まっています。宇都宮の中心市街地再開発が進むにつれ、賃金の多様化も進む可能性があります。
まとめ
- 栃木県の年齢計賃金は355,400円で関東3位、北関東首位
- ホンダ・日産・キヤノンなど大企業の製造拠点が50代の賃金を強力に押し上げ
- 55〜59歳431,700円は北関東で突出した水準(茨城・群馬と50,000円超の差)
- 男女格差は関東最大クラス(68.4%)で製造業の雇用構造を反映
- LRT開業後の宇都宮の都市化が今後の賃金構造に変化をもたらす可能性あり
出典: 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(政府統計の総合窓口 e-Stat)